要石

ホーム ] 上へ ] 松蔭寺のすりばち松 ] 大塚のお地蔵さん ] いちょう観音 ] 首かけ松 ] [ 要石 ] 浮島沼のめ鹿お鹿 ]

要石(かなめいし)

塩谷幸光 画

 昔、昔、原の村の地面の下に長いひげのはえた大きな「なまず」が住んでいました。

 このなまずは、おなかがすいているのか、いたずら好きなのか、とにかく、よく暴れては、村の人々を驚かせていました。このなまずが暴れると、地面が揺れて大きな地震が起こるのでした。地震が起きるたびに家がつぶれて、人や馬や牛などが死んだり、ケガをしたりしました。

 「これは、困ったことだ。」

 村人たちは、いろいろと考えました。

 「そうだ、よいことがある。あの大なまずが動けないように大石をのっけたらどうずら?」

 「それは、いい考えだ!」

そこで、村人たちは、そろって神様にお願いをしました。

 「神様、どうか、あの暴れなまずに、大石をのせてください。」

すると、ある夜のことです。

 「よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ。」

という声が聞こえ、

 「それ引け、やれ引け。」

という大声が、一晩中ひびきわたりました。これを聞いた村人たちは、外に出ようにも、何やら大変恐ろしくて、家の中で震えているばかりでした。

 よく朝、村人たちが、おそるおそる外にでてみると、驚いたことに、あばれなまずの上に、大きな石がのせてありました。

 「やあ、これは驚いた。」

 「こんな大きな石をどこから運んだのだ。」

 「やっぱり、神様が、あばれなまずをこらしめるために運んでくださったにちがいない。」

 「これでは、さすがのあばれなまずも、もう、わるさはできまい。」

と、口々に話し合いました。

 それからというものは、あんなに暴れて人々を困らせていたなまずが、少しもあばれなくなったということです。

 それから後、この地方に非常に大きな地震がおこりました。この地震のため、家がこわれたり、川の土手がきれたりして、大変な騒ぎでした。山のほうでは、山が崩れがして、家も人も埋まってしまったというほどでした。

 しかし、不思議なことにこの大きな石のある原の村だけは何一つ損害がなかったのです。

 人々は、

 「これは、あの大石のおかげだ。」

 「昔、大なまずをおさえてしまったという、神様の運んだ大石があるからだ。」

と、話し合いました。

 ある秋の日のことです。村人たちは、稲のとり入れも近いので、田んぼに出て一生懸命働いていました。

 「今年の稲の出来ぐあいはなかなかいいぞ。」

 「このぶんでいけば、米の取れ高も思ったよりずっといい、去年の不作のことを思えば、本当にありがたいことだ。」

 「そうだ、そうだ。だけど、嵐がくるとこまるなぁ。」

村人たちは、こんな話しをしあって、稲の豊作を、心から祈っていました。

 二、三日たったとき、村人が恐れていた大嵐がやってきました。雨が、はげしくふり、風はたけりくるいました。海は、荒れに荒れました。おそろしい大波が押し寄せてきました。

 「高潮が押し寄せるぞー。みんな、はやく逃げろよー。」

誰かが叫びました。村の人たちはおどろいて、われ先に、山の方へ逃げていきました。高潮は、みるみるうちに、海岸から松林へ、そして、畑へとおしよせてきました。人々は、家がおし流されるのではないかと心配しました。しかし、どうしたことでしょう。一本松の新田の所は高潮があがっていかないのです。

 村の人たちは、不思議に思いました。

 さしもの大嵐も、ようやくおさまりました。

 「高潮のこなかったのはどういうわけだろう。」

と、村人たちはいろいろと調べてみました。この原の村は海岸に近いので、砂が多いところですが、高潮のこなかった場所に、一つ大きな石がでていることがわかりました。そして、この石は、地面の下をずっと横につながって、どこまで続いているのかわからないくらいでした。

 「高潮がこなかったのはこの石のおかげだ。」

村の人たちは、この石を見て、そう信ずるようになったのです。

 村人たちは、

 (地震がきても損害がでなかったり、高潮がきてもふせいでくれてりする、大変頼りになる石だ。この村のためになる石だ。)

と、考えました。そこで、誰いうとなく、せんすのかなめと同じ意味で、「要石(かなめいし)」という名前をつけるようになったということです。

 今、原の一本松には、この「要石」を、おまつりした「要石神社」があります。
この神社にまつわる、このような伝説は、実際に原の土地が他の土地にくらべて、自然の災害が少なかったのかもしれません。

 要石神社のおまつりは、一月、五月、九月のそれぞれ二十九日、年三回行われています。お祭りの時だけでなく普段でもお参りする人がいます。

 それは、耳の悪い人がこの神社に穴のあいた石をあげてお祈りをすると、耳の病気が治るといわれているからです。近くの人だけではなく、三島市や富士市の方からもお参りする人がくるそうです。それで、この神社のまわりを見ると、穴のあいた石がたくさんおいてあります。